北陸新幹線の糸魚川駅で降り、日本海口周辺をかなり歩いてみました。
最初に感じたことを正直に書けば、
「新幹線の停車駅にしては、少し静かだな」
という印象でした。
駅前に大きなホテルや飲食店がずらりと並んでいるわけではなく、人通りも決して多くありません。
ただ、駅前だけを見て帰らず、実際に町の中を歩いてみると、印象は少しずつ変わってきました。
ヒスイ、日本海、塩の道、地酒、鉄道、昔ながらの町並み、地元の魚。
そして、2016年の糸魚川市駅北大火から復興してきた歴史。
一つひとつを見ると、
「糸魚川には、かなり材料があるのではないか」
と思うようになりました。
では、なぜそれが駅前のにぎわいや宿泊につながっているように見えないのか。
今回は、実際に日本海口を歩きながら感じたことを、自分なりにまとめてみます。
北陸新幹線の駅から町歩きをスタート

糸魚川駅は北陸新幹線の停車駅です。
駅舎は新しく、構内も広々としています。
駅に併設された「糸魚川ジオステーション ジオパル」では、糸魚川の大地や鉄道について知ることができます。
そして駅周辺には、鉄道の町らしい場所もあります。
C12 SLパークで感じる鉄道の町

駅近くにはC12 SLパークがあります。
蒸気機関車が屋外展示されていて、鉄道好きでなくてもつい足を止めたくなります。
駅構内のジオパルだけでなく、駅周辺にもこうした鉄道関連の見どころがあるのは面白いところです。
やはり糸魚川といえばヒスイ

糸魚川といえば、やはりヒスイです。
大きなヒスイの原石を見ると、
「ここは石の町なんだ」
ということが一目で伝わります。
糸魚川はユネスコ世界ジオパークの町でもあり、地質そのものが観光資源です。
これは全国的に見ても、かなり強い個性だと思います。
日本海口を歩いて最初に感じた「静かさ」

駅から日本海口へ出て歩いてみます。
昔ながらの建物や、屋根付きの通路が続く場所もあります。
こうした町並みには、雪国らしい味があります。
一方で、実際に歩いたときの人通りは多くありませんでした。
営業していないように見える店舗や、シャッターの下りた店もあります。
北陸新幹線の停車駅というイメージから、
「駅前にはもう少しホテルや飲食店があるのではないか」
と思っていたので、少し意外でした。
ただし、これはあくまで駅前を歩いた印象です。
糸魚川市全体では、ホテルだけでなく旅館、温泉宿、民宿などが市内各地に分散しています。
つまり、
「駅前に宿が少なく見える」ことと、「糸魚川市に宿泊施設がない」ことは別です。
旧高野寫眞舘に残る昭和の空気

今回、町を歩いていて特に印象に残った建物の一つが、旧高野寫眞舘です。
1928年に建てられた鉄筋コンクリート造2階建ての建物で、国の登録有形文化財になっています。
白い外観と玄関まわりの造りに、昭和初期の雰囲気が残っています。
派手な観光施設ではありません。
でも、こうした建物が町の中に自然に残っているところにも、糸魚川の面白さがあります。
町の中に残る酒蔵

さらに歩くと、「清酒 謙信」の大きな看板が目に入ります。
町の中で長く酒造りを続けてきた酒蔵です。
観光客向けに新しく造られた施設ではなく、
「町の中に普通に酒蔵がある」
という感じが良いところです。
観光施設を見るというより、町そのものを見る。
そういう歩き方が糸魚川には合っているように思います。
ここは「塩の道」の出発点

糸魚川には、もう一つ大きな歴史があります。
それが「塩の道」です。
糸魚川から松本へと続く約120kmの街道で、日本海側から塩や海産物などが信州へ運ばれていました。
塩の道広場には、その歴史を象徴する牛の像もあります。
今の糸魚川だけを見ると、海沿いの地方都市という印象かもしれません。
しかし昔は、
日本海と信州を結ぶ交通・物流の重要な起点
だったわけです。
現在の物流につながる歴史として見ても、興味深い場所です。
駅前海望公園から日本海へ

日本海口をさらに海側へ歩くと、駅前海望公園があります。
奴奈川姫の像があり、東屋も設けられています。
今回、日本海展望台には上ることができませんでしたが、こちらの公園にも立ち寄ることができました。
そして何より、実際に歩いて驚いたのが、
駅から海が本当に近いこと。
これはもっと強く打ち出してもよい魅力ではないでしょうか。
新幹線駅から数分で日本海

道路の向こうには、すぐ日本海が広がっています。
新幹線を降りて、少し歩くだけで海まで出られる。
これはかなり分かりやすい特徴です。
「新幹線を降りて、数分歩けば日本海」
という立地そのものが、糸魚川の観光資源だと思います。
日本海展望台は今回は閉鎖中

海沿いには、虹のような形をした日本海展望台があります。
ところが、今回は上ることができませんでした。
現地には通行止めの表示がありました。
確認したところ、私が訪れた2026年10月16日は、ちょうどリニューアル整備工事の期間中でした。
2026年10月13日から11月30日まで、日本海展望台と地下通路が利用できない予定となっていました。
工事開始から、わずか3日後に訪れたことになります。
残念ではありましたが、旅ではこういうこともあります。
「今回は上れなかった」
ということも含めて、旅の記録として残しておきたいと思います。
約10年前、この一帯を大火が襲った

糸魚川駅日本海口を歩くうえで、忘れてはいけないのが2016年12月22日の糸魚川市駅北大火です。
強風によって火は広がり、約4ヘクタールが被災。
147棟が焼損し、145世帯260人、56事業所が被災しました。
幸い死者は出ませんでした。
今の町を歩くだけでは、これほど大きな火災があったことを想像するのは難しいほどです。
それだけ町は再建されてきました。
だから、現在の駅前だけを見て、
「静かだ」「少し寂しい」
だけで終わらせるのは違うと思います。
この町は、約10年前の大火からここまで蘇ってきた町でもあります。
観光客は来ている。でも宿泊は伸びていない
ここからは少し数字を見てみます。
糸魚川市の令和6年度観光統計では、観光入込客総数は1,862,640人。
宿泊者総数は124,526人でした。
宿泊者数は前年より22%減少しています。
ただし、観光入込客数と宿泊者数は数え方が違うため、この二つの数字を単純に割り算して、
「ほとんどが日帰り客」
と判断することはできません。
それでも、
観光で訪れた人を、どう滞在や宿泊につなげるか。
これは一つの課題なのではないかと感じます。
人口減少という現実もある
もう一つ、町のにぎわいを考えるうえで無視できないのが人口減少です。
2025年国勢調査では、糸魚川市の人口は36,519人。
2020年と比べて4,246人、率にして10.4%減少しています。
駅前の人通りの少なさを、観光だけの問題として考えるのは無理があります。
地域そのものの人口が減っている。
これは糸魚川だけではなく、多くの地方都市が抱えている問題です。
糸魚川に足りないのは「観光資源」なのか
ここからは統計ではなく、今回実際に歩いた私自身の感想です。
糸魚川には、ヒスイ、世界ジオパーク、日本海、鉄道、塩の道、地酒、歴史的建築、海の幸、大火からの復興、そして北陸新幹線があります。
これだけあります。
観光資源が少ない町とは、とても思えません。
むしろ、
一つひとつの「点」はあるのに、それが旅行者にとって一つの「線」として見えにくい。
そこに課題があるのではないでしょうか。
今回私が歩いた範囲だけでも、
糸魚川駅 → SL → ヒスイ → 昔ながらの町並み → 旧高野寫眞舘 → 酒蔵 → 塩の道 → 駅前海望公園 → 日本海 → 大火からの復興
という町歩きが成立します。
これだけ駅近くで歩いて回れる地方都市は、意外と多くないと思います。
それでも、どうすれば人を呼び込めるのか
ここまで書いておきながら、私自身、その答えはまだ見つけられていません。
ホテルを増やせばいいのか。
飲食店を増やせばいいのか。
新しい観光施設を造ればいいのか。
イベントを増やせばいいのか。
SNSなどで発信を強めればいいのか。
おそらく、一つの方法だけで解決する問題ではないでしょう。
しかも北陸新幹線に乗れば、富山、金沢、長野など、観光地や宿泊地としてよく知られた都市があります。
その中で、
「糸魚川で降りてみよう」
さらに、
「今日は糸魚川に泊まろう」
と思ってもらう理由をどう作るか。
ここが一番難しいところだと思います。
むしろ「静かな町」であることを生かせないか
一方で、金沢や富山のような観光地を目指す必要もないと思います。
今回歩いてみて感じたのは、糸魚川はむしろ、
静かな町をゆっくり歩く旅
に向いているのではないかということです。
SLを見る。
ヒスイを見る。
古い建物を見る。
酒蔵を見る。
塩の道を知る。
日本海まで歩く。
地元の魚を食べる。
そして、大火から復興してきた町を知る。
派手な観光地を次々と回る旅とは違います。
しかし、50代になった今は、こういう旅もかなり面白く感じます。
最後はメギス天丼

町歩きの途中で食べたのがメギス天丼です。
ブラック焼きそばも候補でしたが、あんかけ系とのことだったため、今回は見送りました。
メギスの天ぷらが何尾ものり、味噌汁と小鉢付き。
そこにビール。
日本海側の町に来たことを感じられる一食でした。
観光地では、食も大切な旅の記憶になります。
「寂れている」だけでは語れなかった糸魚川
糸魚川駅日本海口を歩き始めたときの第一印象は、
「少し寂しい町だな」
でした。
これは実際に感じたことなので、無理に否定するつもりはありません。
ただ、かなり歩いて駅へ戻る頃には、印象は変わっていました。
約10年前の大火からここまで再建してきた。
昔ながらの町並みがある。
ヒスイがある。
SLがある。
塩の道がある。
日本海がある。
地酒がある。
歴史的な建物がある。
地元の魚もある。
そして新幹線が停まる。
糸魚川には、まだ生かし切れていないポテンシャルがある。
私はそう感じました。
では、どうすればもっと人が訪れ、町を歩き、泊まってくれるのか。
今回の滞在では、その答えまでは見つけられませんでした。
ただ、
糸魚川は「何もない町」ではありません。
むしろ、
「すでにある魅力を、どうつなぎ、どう伝えるか」
がこれからの課題なのではないでしょうか。
今回は日本海展望台にも上れませんでした。
一度の訪問だけで結論を出すのではなく、機会があればもう一度訪れて、今度は違った角度から糸魚川を見てみたいと思います。
旅と日常のプチ情報宝箱をもっと見る
購読すると最新の投稿がメールで送信されます。

