【参加レポート】物流安全物流DXエキスポ in 大阪2025〜2024年問題のその先を、働く者の目線で考える〜

 

2025年10月、大阪南港のAT Cホールで開催された「物流安全物流DXエキスポ in 大阪2025」に参加しました。
「制度・現場・学術」という三つの視点から2024年問題を掘り下げる内容で、働く者の立場から見ても多くの気づきと考えるきっかけを得ることができました。

 


「2024年問題」はどうなったのか?残された課題と今後の規制動向〜SOMPO インスティチュートプラス株式会社・水上義宣氏〜

水上さんの講演では、時間外労働の上限規制が物流業界に及ぼした影響について整理されました。
「2024年問題」は単なる労働時間の制限ではなく、業界全体の構造を見直す契機であると強調。
特に、計画的な輸送・共同配送・リードタイムの再設計など、荷主・運送事業者・行政が一体となって取り組む必要性が語られました。

「法改正の目的は“働かせ方の制限”ではなく、“働ける環境の創出”にある」

現場で働く者の立場から見ても、この言葉は重く響きます。制度の意図を正しく理解し、働く環境をどう整えるか――その実践が問われています。

取材から見える物流業界の現場、問題と課題〜フリーライター・橋本愛喜さん〜

橋本さんは、取材で見えてきた物流現場の実態を通じて、社会の関心が薄れつつある現状を指摘しました。
「2024年問題」という言葉が、あたかも“その年で終わった課題”のように聞こえることで、今や人々の記憶から遠ざかってしまっているといいます。

「実際のところ、運べなくなる危機は起きていない。だからこそ、人々の関心が離れてしまっている」

橋本さんは、「2024年問題」ではなく、むしろ『物流危機元年』と呼ぶべきだったのではないかと語りました。
危機が“起きていないように見える”のは、現場の人々が限界の中で何とか踏ん張っているからです。
働く者の目線からすれば、「運べているから安心」ではなく、「まだ何とか運べている」状態なのです。


物流改革は進んだのか。物流が抱える課題と今後の方向性。〜流通経済大学 流通情報学部 教授・矢野裕児氏〜

矢野教授は、日本の物流が抱える構造的課題を理論的に整理し、持続可能な方向性を示しました。
ドライバー不足や長時間労働に加えて、多頻度小口配送や過剰な即日対応といった需要側の在り方が、現場の負担を増大させていることを指摘しました。

  • 輸送の計画化・平準化・同期化
  • サービスやプロセスの標準化
  • 情報共有によるサプライチェーンの最適化

特に注目されたのは、需要側が供給能力に合わせる「デマンドレスポンス」型の発想です。
「待つ」「譲る」「無理をしない」といった社会全体の意識変革こそが、物流を持続させる基盤であると語られました。

「CLO(Chief Logistics Officer)が企業を超えて物流を統治する時代が来る」

企業の壁を超えた連携と統治、それを支える働く人々の声の重要性が強調されました。


まとめ:2024年問題の“その先”へ──現場の努力を見失わないために

今回の三講演を通じて痛感したのは、2024年問題は「終わった話」ではなく、むしろここからが本当のスタートラインだということです。
一見すると物流は止まらずに回っていますが、それは現場の限界を超えた努力によって支えられている現実があります。

働く者の目線から見れば、制度や技術の進化だけでは解決できない「人の力」に依存した構造が依然として残っています。
だからこそ今、社会全体で物流の現実にもう一度目を向け、支える意識を持つことが大切です。

「物流は社会の血流である」――血流が滞れば、社会は動けなくなる。
今こそ、“まだ運べている”現場の努力に光を当て、次の世代へ持続可能な仕組みを残していく時です。

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